その他のオプション:
[-u|--utc] --localtime --noadjfile --directisa --test [-D|--debug]
DEC Alpha 用の知る人ぞ知るオプション:
[-A|--arc] [-J|--jensen] [-S|--srm] [-F|--funky-toy]
すべてのオプションは他と区別がつく範囲において短縮することができる。
また -h はヘルプメッセージを表示する。
hwclock を定期的に実行し、ハードウェア・クロックの時間を増減して、 時計の規則的なずれ (systematic drift) を補償することもできる (systematic drift とは、クロックが放っておかれたとき、 経過時間に比例して時刻がずれる現象のこと)。
同時にカーネルが持つタイムゾーンの値も ローカルのタイムゾーンにセットする。 このとき TZ 環境変数や /usr/share/zoneinfo の内容を tzset(3) と同じように解釈して参照する。 カーネルのタイムゾーンの obsolete なフィールドである tz_dsttime は DST_NONE に設定される。 (このフィールドがかつて意味していた内容に関しては settimeofday(2) を参照のこと。)
このオプションはシステムの起動スクリプトの一部で用いるとよい。
この紀元年の値は、 hwclock がハードウェア・クロックを読み書きするとき常に用いられる。
hwclock --set --date=9/22/96 16:45:05
引数はローカルタイムで与える。 ハードウェア・クロックを協定世界時にしている場合でも、である。 --utc オプションの部分を見よ。
--setepoch オプションを指定した場合は次のオプションも必要である。
例えば、Digital Unix マシンでは以下のようにする。
hwclock --setepoch --epoch=1952
次のオプションはほとんどの機能と同時に用いることができる。
これらの指定を間違ったほうにしたり (あるいはデフォルトを勘違いして 両方とも指定しなかったり) すると、ハードウェア・クロックの設定や クロックへの問い合わせの結果はめちゃめちゃになってしまうだろう。
--utc も --localtime も指定しなかった場合のデフォルトは、最後に hwclock を使って時計を合わせたとき (つまり --set, --systohc, --adjust オプションを指定しての実行が成功したとき) に指定していた方になる。 このときの選択は adjtime ファイルに記録されている。 adjtime ファイルがなかったときのデフォルトはローカルタイムになる。
rtc デバイスドライバは Linux リリース 2 から現れた。
本当は BIOS を更新するのが絶対に良いが、そうできない場合に この問題を補償するには、これらのマシンを用いるとき、常に --badyear オプションを指定すること。 hwclock は、自分が頭のイカれたクロックを扱っていることを知ると、 ハードウェア・クロックの年の部分を無視し、 adjtime ファイルの「最終時計合わせ日付」から 現在の年を推定しようとする。この動作を行わせたい場合には、 hwclock --set または hwclock --systohc を少なくとも年に一回は実行するほうが良いだろう!
hwclock は、ハードウェア・クロックの読み込み時には年の値を無視するが、 設定時には年も設定する。これは 1995, 1996, 1997, 1998 の いずれかとなり、閏年のサイクルに合う年が選択される。 このようにして、ハードウェア・クロックに閏日を挿入させるのである。 繰り返すが、ハードウェア・クロックを設定せずに一年以上 動作させつづけると、この機能が動作せず、一日を失うことになる。
ハードウェア・クロックが 1994 または 1995 になっていると、 hwclock は --badyear が必要ではないか、という警告を発する。
--jensen は、Jensen モデルを動作させていることを意味する。
--funky-toy は、そのマシンでは時間の遷移の検知にハードウェア・クロックの UIP ビットではなく UF ビットが使われていることを意味する。 オプション名の "Toy" は、マシンの "Time Of Year" 機能からとったものである。
Linux システムには主要な時計が 2 つ存在する。
ハードウェア・クロック: これは CPU 内部で動作しているすべてのコントロールプログラムから 独立しており、マシンの電源が OFF のときにも動作している。
ISA システムでは、このクロックは ISA 規格の一部として定義されている。 コントロールプログラムはこの時計に対して 1 秒単位で読み書きできるが、 秒針の変化を検出することもできるので、 実際には仮想的に無限大の精度を持っていることになる。
この時計は一般にハードウェア・クロック、リアルタイム・クロック、RTC、 BIOS クロック、CMOS クロックなどと呼ばれる。 hwclock では「ハードウェア・クロック (原文では Hardware Clock)」を用いる。 他の名前は不正確だったり誤解のもとになるからである。
システム・クロック: これは Linux カーネルの内部に存在している時計で、 タイマ割り込みによって駆動されている (ISA システムでは、タイマ割り込みは ISA 標準の一部である)。 すなわち Linux が起動している間しか動作しない。 システム時刻は UTC 1970/01/01 00:00:00 からの経過秒数である (より簡単に言えば 1969 年終了後の経過秒数である)。 しかしシステム時刻は整数ではなく、仮想的に無限大の精度を持っている。
Linux ではシステム・クロックがすべての基準となる時計である。 ハードウェア・クロックの基本的な役割は、システムが動いていない間にも 時計を動かしつづけることである。 Linux システムは起動時に一度だけハードウェア・クロックを参照し、 システム・クロックを設定する。 その後はハードウェア・クロックは用いない。 ISA システムの設計対象であった DOS においては、 ハードウェア・クロックがただ一つの実時間時計であることに注意すること。
システム・クロックには不連続が存在してはならない。 これはシステムが走っている間に date(1L) プログラムを実行して時計を合わせるような場合でも同様である。 一方ハードウェア・クロックには、システムの実行中にでも何を行ってもよい。 次回 Linux が起動したときに、 ハードウェア・クロックからこの調整された時間が使用される。 システムが走っている間にシステム・クロックをスムースに修正するには adjtimex(8) を用いることもできる。
Linux カーネルは、システムのローカルなタイムゾーンという概念を持っている。 しかし注意してほしい -- 「カーネルが自分をどのタイムゾーンにいると思っているか」など、 誰も気にしていないのである。代わりに、タイムゾーンに関るプログラム (おそらくローカルな時間を表示しようとしているもの) は、 ほぼ間違いなく従来用いられてきた方法でタイムゾーンを決定する。 つまり TZ 環境変数や /usr/share/zoneinfo ディレクトリを、 tzset(3) で説明されているようなやり方で参照するのである。 しかしカーネルのタイムゾーンの値を見るプログラムも存在するし、 カーネルの周辺部分 (ファイルシステムなど) もこちらを参照する。 vfat ファイルシステムなどがそうである。カーネルのタイムゾーンの 値が間違っていると、vfat ファイルシステムはファイルのタイムスタンプの 設定・取得を間違ってしまう。
hwclock は --hctosys オプションでシステム・クロックをセットするとき、 カーネルのタイムゾーンも TZ や /usr/share/zoneinfo の値に設定する。
タイムゾーンの値は実際には 2 つの部分からなる。 1) tz_minuteswest フィールド: (DST でない) ローカルタイムが UTC から何分遅れているかを表す。 2) tz_dsttime: 夏時間 (DST) の形式を表し、 現在地の現在時刻に影響する。 この 2 番目のフィールドは Linux では用いられず、常に 0 となる。 (settimeofday(2) も参照のこと。)
hwclock はハードウェア・クロック時刻の取得や設定に、いろいろな方法を用いる。 もっとも普通のやり方は、デバイススペシャルファイル /dev/rtc に対して I/O を行う方法である。 しかしこの方法が常に利用できるとは限らない。 そもそも rtc ドライバが Linux へ追加されたのは比較的最近のことである。 古いシステムには存在しない。 DEC Alpha で動作する rtc ドライバもあるが、 このドライバが使えない Alpha マシンもたくさんあるようである (症状としては hwclock がハングする)。
古いシステムでは、ハードウェア・クロックへのアクセス方法は システムのハードウェアに依存している。
ISA システムでは、 hwclock は時計を構成していた「CMOS メモリ」のレジスタに直接アクセスすることができた (ポート 0x70 と 0x71 に I/O を行う)。 これを行うには hwclock の実効ユーザー ID がスーパーユーザーでなければならない。 (Jensen Alpha の場合は、このような I/O 命令を hwclock に実行させることはできない。 したがってこの場合はデバイススペシャルファイル /dev/port が用いられる。 これは I/O サブシステムへの低レベルインターフェースの ほとんどを与えるものである。)
これは時計にアクセスする方法としては実に情けない方法である。 ユーザー空間のプログラムでは、このように直接 I/O を叩いたり、 割り込みを禁止したりすることは通常想定されていないのだから。 hwclock でこれが使えるようにしてあるのは、 古い Linux カーネルで ISA マシンを使う場合には、 これが唯一の方法だからである。
m68k システムでは、 hwclock はコンソールドライバとデバイススペシャルファイル /dev/tty1 を通して時計にアクセスすることができる。
hwclock は /dev/rtc を用いようとする。この機能を持たないカーネル向けに コンパイルされていたり、/dev/rtc をオープンできない場合には、 hwclock は他の方法を (可能であれば) 試そうとする。 ISA や Alpha のマシンでは、 /dev/rtc を試さずに、最初から hwclock に CMOS レジスタを直接操作するように強制することもできる。 これには --directisa オプションを指定する。
通常ハードウェア・クロックはそれほど正確なものではない。 しかし、その「不正確さ」は完全に予測できるものである。 すなわち、時計は一日あたり同じ時間だけ進む(あるいは遅れる)のである。 これを規則的なずれ (systematic drift) と呼ぶことにする。 hwclock の時刻合わせの機能は、この規則的なずれに対応する補正量を求め、 適用するものである。
以下に動作原理を述べる。 hwclock は /etc/adjtime というファイルを管理し、そこに履歴情報を保管する。 このファイルを adjtime ファイルと呼ぶ。
adjtime ファイルがない状態から話をはじめる。 hwclock --set コマンドを用いてハードウェア・クロックを現在の正しい値に合わせたとする。 このとき hwclock は adjtime ファイルを作成し、そこに現在の時刻を「最後に時計合わせ (calibration) が行われた時刻」として記録する。 五日後に時計は 10 秒進んだとし、それを修正するために再び hwclock --set が実行されたとする。 hwclock は adjtime ファイルを更新し、 現在の時刻を最後に時計合わせが行われた時刻として記録、 同時に 2 秒/日という値を規則的なずれの値として記録する。 24 時間が経過したときに hwclock --adjust コマンドを実行すると、 hwclock は adjtime ファイルを参照し、放っておかれた時計は一日に 2 秒進むこと、 時計はちょうど一日だけ放置されていたことを読みとる。 そこで hwclock はハードウェア・クロックから 2 秒を差し引き、現在の時刻を時計の補正 (adjustment) が行われた時刻として記録する。 さらに 24 時間が経過したときに hwclock --adjust を実行すれば、 hwclock はまた同じことを行う。 つまり 2 秒を差し引き、現在の時刻を adjtime ファイルに書き込む。
(--set または --systohc を用いて) 時計を合わせるごとに、 hwclock は規則的なずれを再計算する。 このときには、最後に時計合せが行われた時点からの経過、 途中で行われた補正で用いられていたずれの量、 最後に補正を行った時刻からの経過時間などが参照される。
hwclock が時計を設定するときには、常に小さなずれが生じる可能性がある。 これが 1 秒に満たない場合には、時計の補正量からは切り捨てられる。 後に再び補正を行う際に、このずれが蓄積して 1 秒を越えていれば、 その分はその時に補正される。
システムの起動時に (あるいはシステムの動作中に cron で定期的に) hwclock --hctosys を行う時には、常にその前に hwclock --adjust を行うと良いだろう。
adjtime ファイルは、当初は修正量 (adjustments) だけを目的と していたためにこの名前がつけられたが、現在では他の情報も書き込まれており、 hwclock が一度起動され、次に起動されるまでにその情報を保持する。
adjtime は ASCII ファイルであり、フォーマットは以下の通り:
一行目は三つの数値からなり、それぞれ空白で区切られる: 1) 一日あたりに生じる時刻ずれを秒で表したもの (浮動小数点型 10 進): 2) 最後に時計合わせあるいは補正を行った時刻を 1969 UTC からの経過秒数で表したもの (10 進整数): 3) ゼロ (clock(8) との互換性のためのもの)
二行目: 数値が一つ: 最後に時計を合わせた時刻を 1969 UTC からの経過秒数で表したもの。 時計合わせが一度もされていなかったり、以前の時計あわせに問題があった (例えばその時計あわせ以降にハードウェア・クロックの 時刻が不正なことがわかったとか) 場合には 0 が入る。 これは 10 進の整数である。
三行目: "UTC" または "LOCAL"。ハードウェア・クロックが 協定世界時かローカルタイム化を示す。 この値は hwclock にコマンドラインを指定すればいつでも上書き可能である。
以前 clock(8) で使っていた adjtime ファイルは hwclock でもそのまま使うことができる。
ハードウェアクロックを正しい値に同期させるのに、 別法が取れるようなシステムもある。 Linux カーネルには、11 分ごとにシステムクロックを ハードウェアクロックにコピーするようなモードが存在する。 これは、何らかの洗練された方法 (ntp など) でシステムクロックを 同期できている時には、よいモードであろう。 (ntp とは、ネットワークのどこかにあるタイムサーバーか、システムに付属した 電波時計にシステム・クロックを同期させる手法である。RFC 1305 を見よ。)
このモード (「11 分モード」と呼ぶ) は、何かによって有効にされるまでは オフになっている。 例えば ntp デーモンである xntpd は このモードを有効にできるもののひとつである。 オフにするのも何かを実行すればよく、例えば hwclock --hctosys を実行して、システム・クロックを古い方法で設定すれば、11 分モードはオフになる。
モードがオンかオフかを調べるには、 adjtimex --print コマンドを実行して "status" の値を見ればよい。 この数値の第 64 ビットが (2 進数表示で) 0 ならば、 11 分モードはオンになっている。 それ以外の場合はオフである。
システムが 11 分モードで動作している場合に hwclock --adjust や hwclock --hctosys を実行してはならない。システムをおかしくしてしまう。 hwclock --hctosys を起動時だけに用いるならかまわない。 これを用いれば、システム・クロックが外部の値に同期して 11 分モードが開始されるまで、システムクロックを妥当な値にできる。
その手の標準の中には、ISA マシンの CMOS 50 バイト目を、 現在の世紀の指標として定義しているものがある。 hwclock は、このバイトの読み書きを行わない。 なぜならこのバイトをそのようには利用していないマシンが存在するし、 いずれにしてもこれは実際には必要ないからである。 年の世紀の部分を使えば、現在の世紀を特定するには充分である。
もしこの CMOS の世紀バイトの利用ルーチンを開発した (したい) 方がいたら、 hwclock のメンテナに連絡してほしい。 オプションを付加することは望ましいことであるから。
このセクションが意味を持つのは、ハードウェア・クロックに "direct ISA" によってアクセスしている場合だけであることに注意。
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