ライフタイムの省略
よくあるパターンをより易しく書けるように、Rust では関数シグネチャのライフタイムを省略できます。
ライフタイムポジション とは、型の定義においてライフタイムを書ける場所のことです。
&'a T
&'a mut T
T<'a>
ライフタイムポジションは、「入力」または「出力」という形で現れます。
fn
定義では、入力とは仮引数の型のことで、出力とは結果の型のことです。fn foo(s: *str) -> (&str, &str)
では、入力ポジションのライフタイムが一つ省略され、 出力ポジションのライフタイムが二つ省略されています。fn
メソッド定義の入力ポジションには、 メソッドのimpl
ヘッダに現れるライフタイムは含まれません。 (デフォルトメソッドの場合の trait ヘッダに現れるライフタイムも含まれません。)
- 将来のバージョンでは、
impl
ヘッダのライフタイムの省略も同様に可能になるでしょう。
省略のルールは次の通りです。
- 入力ポジションの省略されたライフタイムは、それぞれ別のライフタイムパラメータになります。
- 入力ポジションのライフタイム(省略されているかどうかに関わらず)が一つしか無い場合、 省略された出力ライフタイム全てにそのライフタイムが割り当てられます。
- 入力ポジションに複数のライフタイムがあって、そのうちの一つが
&self
または&mut self
の場合、 省略された出力ライフタイム全てにself
のライフタイムが割り当てられます。
- それ以外の場合は、出力のライフタイムを省略するとエラーになります。
例:
fn print(s: &str); // 省略した場合
fn print<'a>(s: &'a str); // 展開した場合
fn debug(lvl: uint, s: &str); // 省略した場合
fn debug<'a>(lvl: uint, s: &'a str); // 展開した場合
fn substr(s: &str, until: uint) -> &str; // 省略した場合
fn substr<'a>(s: &'a str, until: uint) -> &'a str; // 展開した場合
fn get_str() -> &str; // エラー
fn frob(s: &str, t: &str) -> &str; // エラー
fn get_mut(&mut self) -> &mut T; // 省略した場合
fn get_mut<'a>(&'a mut self) -> &'a mut T; // 展開した場合
fn args<T: ToCStr>(&mut self, args: &[T]) -> &mut Command // 省略した場合
fn args<'a, 'b, T: ToCStr>(&'a mut self, args: &'b [T]) -> &'a mut Command // 展開した場合
fn new(buf: &mut [u8]) -> BufWriter; // 省略した場合
fn new<'a>(buf: &'a mut [u8]) -> BufWriter<'a> // 展開した場合