Drain
Drain に移行しましょう。 Drain は大体 IntoIter と同じですが、 Vec を消費 する代わりに、 Vec を借用し、アロケーションに触れないままにします。 とりあえず、 "基本的な" 全範囲のバージョンだけを実装しましょう。
use std::marker::PhantomData;
struct Drain<'a, T: 'a> {
// ライフタイムの制限を課す必要があるため、 `&'a mut Vec<T>` という
// ライフタイムを付与します。セマンティクス的に、これを含んでいるからです。
// 単に `pop()` と `remove(0)` を呼び出しています。
vec: PhantomData<&'a mut Vec<T>>
start: *const T,
end: *const T,
}
impl<'a, T> Iterator for Drain<'a, T> {
type Item = T;
fn next(&mut self) -> Option<T> {
if self.start == self.end {
None
-- 待った、何か似ているな。もっと圧縮してみましょう。 IntoIter と Drain は両方同じ構造を持っています。抽出しましょう。
#![allow(unused)] fn main() { struct RawValIter<T> { start: *const T, end: *const T, } impl<T> RawValIter<T> { // 値のコンストラクトはアンセーフです。関連付けられているライフタイムが // 存在しないからです。 これは、RawValIter を、実際のアロケーションと同一の構造体に // 保存するため必要です。プライベートな実装詳細ですので問題ありません。 unsafe fn new(slice: &[T]) -> Self { RawValIter { start: slice.as_ptr(), end: if slice.len() == 0 { // もし `len = 0` なら、実際にはメモリをアロケートしていません。 // GEP を通して LLVM に間違った情報を渡してしまうため、 // オフセットを避ける必要があります。 slice.as_ptr() } else { slice.as_ptr().offset(slice.len() as isize) } } } } // Iterator と DoubleEndedIterator の impl は IntoIter と同一です。 }
そして IntoIter は以下のようになります。
pub struct IntoIter<T> {
_buf: RawVec<T>, // これを扱うことはないのですが、その存在は必要です。
iter: RawValIter<T>,
}
impl<T> Iterator for IntoIter<T> {
type Item = T;
fn next(&mut self) -> Option<T> { self.iter.next() }
fn size_hint(&self) -> (usize, Option<usize>) { self.iter.size_hint() }
}
impl<T> DoubleEndedIterator for IntoIter<T> {
fn next_back(&mut self) -> Option<T> { self.iter.next_back() }
}
impl<T> Drop for IntoIter<T> {
fn drop(&mut self) {
for _ in &mut self.iter {}
}
}
impl<T> Vec<T> {
pub fn into_iter(self) -> IntoIter<T> {
unsafe {
let iter = RawValIter::new(&self);
let buf = ptr::read(&self.buf);
mem::forget(self);
IntoIter {
iter: iter,
_buf: buf,
}
}
}
}
設計の中で、ちょっと奇妙なものを少し含めたことに注意してください。 これは、 Drain を任意の副範囲で動作させるのを、ちょっと簡単にするためです。 特に、 RawValIter がドロップの際に、自身をドレイン出来るでしょうが、 これは、もっと複雑な Drain に対しては正しく動作しません。 スライスも用いて、 Drain の初期化を単純にします。
よし、これで Drain を本当に楽に実装できます。
use std::marker::PhantomData;
pub struct Drain<'a, T: 'a> {
vec: PhantomData<&'a mut Vec<T>>,
iter: RawValIter<T>,
}
impl<'a, T> Iterator for Drain<'a, T> {
type Item = T;
fn next(&mut self) -> Option<T> { self.iter.next() }
fn size_hint(&self) -> (usize, Option<usize>) { self.iter.size_hint() }
}
impl<'a, T> DoubleEndedIterator for Drain<'a, T> {
fn next_back(&mut self) -> Option<T> { self.iter.next_back() }
}
impl<'a, T> Drop for Drain<'a, T> {
fn drop(&mut self) {
for _ in &mut self.iter {}
}
}
impl<T> Vec<T> {
pub fn drain(&mut self) -> Drain<T> {
unsafe {
let iter = RawValIter::new(&self);
// これは mem::forget に対する安全策です。もし Drain が forget されたら、
// 単に Vec の内容全体がリークします。そして*結局*これをしなければ
// なりません。なら今やっちゃいましょう。
self.len = 0;
Drain {
iter: iter,
vec: PhantomData,
}
}
}
}
mem::forget
の詳細は、リークの章を参照してください。