はじめに

注釈: この本のこの版は、本として利用可能なThe Rust Programming Languageと、 No Starch Pressのebook形式と同じです。

The Rust Programming Languageへようこそ。Rustに関する入門書です。

Rustプログラミング言語は、高速で信頼できるソフトウェアを書く手助けをしてくれます。 高レベルのエルゴノミクス(訳注: ergonomicsとは、人間工学的という意味。砕いて言えば、人間に優しいということ)と低レベルの制御は、 しばしばプログラミング言語の設計においてトレードオフの関係になります; Rustは、その衝突に挑戦しています。バランスのとれた強力な技術の許容量と素晴らしい開発者経験を通して、 Rustは伝統的にそれらの制御と紐付いていた困難全てなしに低レベルの詳細(メモリ使用など)を制御する選択肢を与えてくれます。

Rustは誰のためのものなの

Rustは、様々な理由により多くの人にとって理想的です。いくつか最も重要なグループを見ていきましょう。

開発者チーム

Rustは、いろんなレベルのシステムプログラミングの知識を持つ開発者の巨大なチームとコラボするのに生産的なツールであると証明してきています。 低レベルコードは様々な種類の微細なバグを抱える傾向があり、そのようなバグは他の言語だと広範なテストと、 経験豊富な開発者による注意深いコードレビューによってのみ捕捉されるものです。Rustにおいては、 コンパイラが並行性のバグも含めたこのようなとらえどころのないバグのあるコードをコンパイルするのを拒むことで、 門番の役割を担います。コンパイラとともに取り組むことで、チームはバグを追いかけるよりもプログラムのロジックに集中することに、 時間を費やせるのです。

Rustはまた、現代的な開発ツールをシステムプログラミング世界に導入します。

  • Cargoは、付属の依存関係管理ツール兼ビルドツールで、依存関係の追加、コンパイル、管理を容易にし、Rustのエコシステム全体で一貫性を持たせます。
  • Rustfmtは開発者の間で一貫したコーディングスタイルを保証します。
  • Rust言語サーバーは、IDE(統合開発環境)との統合により、コード補完やインラインエラーメッセージに対応しています。

これらのツールやRustのエコシステムの他のツールを使用することで、開発者はシステムレベルのコードを書きながら生産性を高めることができます。

学生

Rustは、学生やシステムの概念を学ぶことに興味のある方向けです。Rustを使用して、 多くの人がOS開発などの話題を学んできました。コミュニティはとても暖かく、喜んで学生の質問に答えてくれます。 この本のような努力を通じて、Rustチームはシステムの概念を多くの人、特にプログラミング初心者にとってアクセス可能にしたいと考えています。

企業

数百の企業が、大企業、中小企業を問わず、様々なタスクにプロダクションでRustを使用しています。 そのタスクには、コマンドラインツール、Webサービス、DevOpsツール、組み込みデバイス、 オーディオとビデオの解析および変換、暗号通貨、生物情報学、サーチエンジン、IoTアプリケーション、 機械学習、Firefoxウェブブラウザの主要部分さえ含まれます。

オープンソース開発者

Rustは、Rustプログラミング言語やコミュニティ、開発者ツール、ライブラリを開発したい方向けです。 あなたがRust言語に貢献されることを心よりお待ちしております。

スピードと安定性に価値を見出す方

Rustは、スピードと安定性を言語に渇望する方向けです。ここでいうスピードとは、 Rustで作れるプログラムのスピードとソースコードを書くスピードのことです。Rustコンパイラのチェックにより、 機能の追加とリファクタリングを通して安定性を保証してくれます。これはこのようなチェックがない言語の脆いレガシーコードとは対照的で、 その場合開発者はしばしば、変更するのを恐れてしまいます。ゼロコスト抽象化を志向し、 手で書いたコードと同等の速度を誇る低レベルコードにコンパイルされる高レベル機能により、 Rustは安全なコードを高速なコードにもしようと努力しています。

Rust言語は他の多くのユーザのサポートも望んでいます; ここで名前を出した方は、 ただの最大の出資者の一部です。総合すると、Rustの最大の野望は、プログラマが数十年間受け入れてきた代償を、安全性生産性、 スピードエルゴノミクスを提供することで排除することです。Rustを試してみて、その選択が自分に合っているか確かめてください。

この本は誰のためのものなの

この本は、あなたが他のプログラミング言語でコードを書いたことがあることを想定していますが、 具体的にどの言語かという想定はしません。私たちは、幅広い分野のプログラミング背景からの人にとってこの資料を広くアクセスできるようにしようとしてきました。 プログラミングとはなんなのかやそれについて考える方法について多くを語るつもりはありません。 もし、完全なプログラミング初心者であれば、プログラミング入門を特に行う本を読むことでよりよく役に立つでしょう。

この本の使い方

一般的に、この本は、順番に読み進めていくことを前提にしています。後の章は、前の章の概念の上に成り立ち、 前の章では、ある話題にさほど深入りしない可能性があります; 典型的に後ほどの章で同じ話題を再度しています。

この本には2種類の章があるとわかるでしょう: 概念の章とプロジェクトの章です。概念の章では、 Rustの一面を学ぶでしょう。プロジェクトの章では、それまでに学んだことを適用して一緒に小さなプログラムを構築します。 2、12、20章がプロジェクトの章です。つまり、残りは概念の章です。

第1章はRustのインストール方法、“Hello, world!”プログラムの書き方、Rustのパッケージマネージャ兼、 ビルドツールのCargoの使用方法を説明します。第2章は、Rust言語への実践的な導入です。ここでは概念をざっくりと講義し、後ほどの章で追加の詳細を提供します。 今すぐRustの世界に飛び込みたいなら、第2章こそがそのためのものです。第3章は他のプログラミング言語の機能に似たRustの機能を講義していますが、 最初その3章すら飛ばして、まっすぐに第4章に向かい、Rustの所有権システムについて学びたくなる可能性があります。 しかしながら、あなたが次に進む前に全ての詳細を学ぶことを好む特別に几帳面な学習者なら、 第2章を飛ばして真っ先に第3章に行き、学んだ詳細を適用するプロジェクトに取り組みたくなった時に第2章に戻りたくなる可能性があります。

第5章は、構造体とメソッドについて議論し、第6章はenum、match式、if let制御フロー構文を講義します。 構造体とenumを使用してRustにおいて独自の型を作成します。

第7章では、Rustのモジュールシステムと自分のコードとその公開されたAPI(Application Programming Interface)を体系化するプライバシー規則について学びます。 第8章では、ベクタ、文字列、ハッシュマップなどの標準ライブラリが提供する一般的なコレクションデータ構造の一部を議論します。 第9章では、Rustのエラー処理哲学とテクニックを探究します。

第10章ではジェネリクス、トレイト、ライフタイムについて深入りし、これらは複数の型に適用されるコードを定義する力をくれます。 第11章は、完全にテストに関してで、Rustの安全性保証があってさえ、プログラムのロジックが正しいことを保証するために、 必要になります。第12章では、ファイル内のテキストを検索するgrepコマンドラインツールの一部の機能を自身で構築します。 このために、以前の章で議論した多くの概念を使用します。

第13章はクロージャとイテレータを探究します。これらは、関数型プログラミング言語由来のRustの機能です。 第14章では、Cargoをより詳しく調査し、他人と自分のライブラリを共有する最善の策について語ります。 第15章では、標準ライブラリが提供するスマートポインタとその機能を可能にするトレイトを議論します。

第16章では、並行プログラミングの異なるモデルを見ていき、Rustが恐れなしに複数のスレッドでプログラムする手助けをする方法を語ります。 第17章では、馴染み深い可能性のあるオブジェクト指向プログラミングの原則とRustのイディオムがどう比較されるかに目を向けます。

第18章は、パターンとパターンマッチングのリファレンスであり、これらはRustプログラムを通して、 考えを表現する強力な方法になります。第19章は、unsafe Rustやマクロ、ライフタイム、トレイト、型、関数、クロージャの詳細を含む、 興味のある高度な話題のスモーガスボード(訳注: 日本でいうバイキングのこと)を含みます。

第20章では、低レベルなマルチスレッドのWebサーバを実装するプロジェクトを完成させます!

最後に、言語についての有用な情報をよりリファレンスのような形式で含む付録があります。 付録AはRustのキーワードを講義し、付録Bは、Rustの演算子と記号、付録Cは、 標準ライブラリが提供する導出可能なトレイト、付録Dはいくつか便利な開発ツールを講義し、 付録EではRustのエディションについて説明します。

この本を読む間違った方法なんてありません: 飛ばしたければ、どうぞご自由に! 混乱したら、前の章に戻らなければならない可能性もあります。ですが、自分に合った方法でどうぞ。

Rustを学ぶ過程で重要な部分は、コンパイラが表示するエラーメッセージを読む方法を学ぶことです: それは動くコードへと導いてくれます。そのため、各場面でコンパイラが表示するエラーメッセージとともに、 コンパイルできない例を多く提供します。適当に例を選んで走らせたら、コンパイルできないかもしれないことを知ってください! 周りのテキストを読んで実行しようとしている例がエラーになることを意図しているのか確認することを確かめてください。 フェリスもコードが動作するとは意図されていないコードを見分けるのを手助けしてくれます:

FerrisMeaning
このコードはコンパイルできません!
このコードはパニックします!
このコードはアンセーフなコードを含みます。
このコードは求められている振る舞いをしません。

ほとんどの場合、コンパイルできないあらゆるコードの正しいバージョンへと導きます。

ソースコード

この本が生成されるソースファイルは、GitHubで見つかります。

訳注: 日本語版はこちらです。

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