パフォーマンス比較: ループVSイテレータ
ループを使うべきかイテレータを使うべきか決定するために、search
関数のうち、どちらのバージョンが速いか知る必要があります:
明示的なfor
ループがあるバージョンと、イテレータのバージョンです。
サー・アーサー・コナン・ドイル(Sir Arthur Conan Doyle)の、
シャーロックホームズの冒険(The Adventures of Sherlock Homes)全体をString
に読み込み、
そのコンテンツでtheという単語を検索することでベンチマークを行いました。
こちらが、for
を使用したsearch
関数のバージョンと、イテレータを使用したバージョンに関するベンチマーク結果です。
test bench_search_for ... bench: 19,620,300 ns/iter (+/- 915,700)
test bench_search_iter ... bench: 19,234,900 ns/iter (+/- 657,200)
イテレータバージョンの方が些か高速ですね!ここでは、ベンチマークのコードは説明しません。 なぜなら、要点は、2つのバージョンが等価であることを証明することではなく、 これら2つの実装がパフォーマンス的にどう比較されるかを大まかに把握することだからです。
より包括的なベンチマークとするためには、いろんなサイズの様々なテキストをcontents
として、異なる単語、異なる長さの単語をquery
として、
他のあらゆる種類のバリエーションを確認するべきです。重要なのは: イテレータは、
高度な抽象化にも関わらず、低レベルのコードを自身で書いているかのように、ほぼ同じコードにコンパイルされることです。
イテレータは、Rustのゼロコスト抽象化の一つであり、これは、抽象化を使うことが追加の実行時オーバーヘッドを生まないことを意味しています。
このことは、C++の元の設計者であり実装者のビャーネ・ストロヴストルップ(Bjarne Stroustrup)が、
ゼロオーバーヘッドを「C++の基礎(2012)」で定義したのと類似しています。
一般的に、C++の実装は、ゼロオーバーヘッド原則を遵守します: 使用しないものには、支払わなくてよい。 さらに: 実際に使っているものに対して、コードをそれ以上うまく渡すことはできない。
別の例として、以下のコードは、オーディオデコーダから取ってきました。デコードアルゴリズムは、
線形予測数学演算を使用して、以前のサンプルの線形関数に基づいて未来の値を予測します。このコードは、
イテレータ連結をしてスコープにある3つの変数に計算を行っています: buffer
というデータのスライス、
12のcoefficients
(係数)の配列、qlp_shift
でデータをシフトする量です。この例の中で変数を宣言しましたが、
値は与えていません; このコードは、文脈の外では大して意味を持ちませんが、
それでもRustが高レベルな考えを低レベルなコードに翻訳する簡潔で現実的な例になっています:
let buffer: &mut [i32];
let coefficients: [i64; 12];
let qlp_shift: i16;
for i in 12..buffer.len() {
let prediction = coefficients.iter()
.zip(&buffer[i - 12..i])
.map(|(&c, &s)| c * s as i64)
.sum::<i64>() >> qlp_shift;
let delta = buffer[i];
buffer[i] = prediction as i32 + delta;
}
prediction
の値を算出するために、このコードは、coefficients
の12の値を繰り返し、zip
メソッドを使用して、
係数値を前のbuffer
の12の値と組にします。それから各組について、その値をかけ合わせ、結果を全て合計し、
合計のビットをqlp_shift
ビット分だけ右にシフトさせます。
オーディオデコーダのようなアプリケーションの計算は、しばしばパフォーマンスに最も重きを置きます。
ここでは、イテレータを作成し、2つのアダプタを使用し、それから値を消費しています。
このRustコードは、どんな機械語コードにコンパイルされるのでしょうか?えー、執筆時点では、
手作業で書いたものと同じ機械語にコンパイルされます。coefficients
の値の繰り返しに対応するループは全く存在しません:
コンパイラは、12回繰り返しがあることを把握しているので、ループを「展開」します。
ループの展開は、ループ制御コードのオーバーヘッドを除去し、代わりにループの繰り返しごとに同じコードを生成する最適化です。
係数は全てレジスタに保存されます。つまり、値に非常に高速にアクセスします。実行時に配列の境界チェックをすることもありません。 コンパイラが適用可能なこれらの最適化全てにより、結果のコードは究極的に効率化されます。このことがわかったので、 もうイテレータとクロージャを恐れなしに使用することができますね!それらのおかげでコードは、高レベルだけれども、 そうすることに対して実行時のパフォーマンスを犠牲にしないようになります。
まとめ
クロージャとイテレータは、関数型言語の考えに着想を得たRustの機能です。低レベルのパフォーマンスで、 高レベルの考えを明確に表現するというRustの能力に貢献しています。クロージャとイテレータの実装は、 実行時のパフォーマンスが影響されないようなものです。これは、ゼロ代償抽象化を提供するのに努力を惜しまないRustの目標の一部です。
今や入出力プロジェクトの表現力を改善したので、プロジェクトを世界と共有するのに役に立つcargo
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